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迷ったところに、その人が出る

こんにちは、中村です。

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今日は、仕事の「迷ったところ」について書きます。

どんな仕事にも、事例を紹介するページのようなものがあります。家づくりの会社なら施工事例、税理士さんなら解決事例、うちのような会社なら制作実績。

そこに載っているのは、たいてい作ったものの名前ですよね。「〇〇様邸 木のぬくもりを感じる家」「コーポレートサイト リニューアル」。写真もきれいで、数もどんどん増えていきます。それなのに、読んだ人の中に何も残らないことがあります。

できあがったものだけを見せている

書いた人が手を抜いたわけではないんです。掲載の許可を取って、写真を撮り直して、ちゃんと手をかけている。

ただ、そこに載っているのは、できあがったものだけなんですよね。できあがるまでのあいだに何があったかは、書いた人の頭の中にしまわれたままになっています。

料理を出すときに、お皿だけを見せて、材料をどこで買ってきたかも、どこで味を決めたかも言わない。そんな感じに近いかもしれません。

その人が出るのは決める前のところ

仕事の中身って、決めた結果よりも、決める前の分かれ道に出るんじゃないかと思っています。

たとえば家づくりだと、こういう場面があります。予算に収めるのに、外壁の仕様を下げるか、部屋をひとつ減らすか。ご夫婦で意見が分かれた。10年後にお子さんが家を出る前提で、部屋数のほうを見直すことにする。

できあがった家の写真には、この時間は写りません。でも、この会社が何を大事にして決めるのかは、ここにいちばん出ています。

作ったものは真似できます。同じ間取りも、同じ色も。でも、迷い方までは真似できません。

覚えているのに誰にも話していない

おもしろいのは、この「迷ったところ」を、書こうとすると出てこないことです。思い出せない、という言い方になるんですよね。

忘れたのではなくて、聞いていないんだと思います。

担当した人に聞いてみると、たいてい出てきます。頼まれたとき、その方はどんなふうに話していたか。途中でいちばん悩んだのはどこか。終わってからかけられた言葉はあるか。この3つを聞くと、本人がいちばん喋りはじめる。誰にも話していないだけで、ちゃんと覚えているんですよね。

自分のした仕事の話を、聞かれて話す機会って、意外と少ないんだと思います。

そのあとに言われた言葉のほうが残る

もうひとつ、書いておきたいのが「そのあとどうなったか」です。

引き渡してから、公開してから、終わってから。そのあとに何が起きたか。数字があれば数字がいいのですが、数字にならない仕事のほうが多いですよね。

そういう時は、お客様からもらった言葉をひとつ。終わってすぐの「ありがとう」ではなくて、しばらく経ってから出てきた言葉のほうがいいです。半年後の一言は、気を遣って言えるものではないので。

ここでひとつだけ気をつけたいのが、うちがやったから増えました、とは書かないことです。応募が3件あったのは、たぶんそれだけの話ではありません。求人票も直したかもしれないし、その年の巡り合わせもあったかもしれない。だから、あとに起きたことを、事実としてそっと置くだけにしています。

まずは一行だけ

やるなら、直近で終わった3件くらいがいいと思います。うまくいった順ではなくて、終わった順で。どれを選ぶかで悩みはじめると、そこで止まってしまうので。

1件15分くらい、3件で45分。それから、一行目だけ差し替えます。作ったものの名前を、頼まれた時の状況に。写真の位置も見た目もそのままで平気です。残りの何十件かは、当分そのままにしておいて大丈夫だと思います。

自分の仕事を振り返る時間って、なかなか取らないですよね。45分だけ、あの時どこで迷ったんだったかな、と思い出してみる。書くためというより、その時間そのものが、けっこういいものなんじゃないかと思っています。