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PEOPLE|2024.5.28

+sol代表 / Tresor 仁科 彩さん

上田市でコンテナカフェ+solを経営されている仁科彩さん。ご自身の店舗のロゴやイメージキャラクターを制作されています。ドリンクのラベルや店舗インスタグラムで発信されているイラストが目に留まり、tone villageの1周年記念ノベルティのイラスト制作をご依頼しました。

本記事では、仁科さんがカフェを始めるまでのこと、イラストを描き始めたきっかけ、活動される上で大切にしていることなどをお話しいただきました。

何もないところから何かを作って表現することが好き

+solでは、私が以前パティシエとして働いていた経験を生かし、自分で開発したドリンク・スイーツのメニューを手作りで提供しています。

私がお菓子作りに興味を持ったのは高校生のときです。高校が総合学科で、必修の授業だけ当てはめたら残りは好きなように時間割を組めるので、そのほとんどに製菓や製パンなど、調理関係の授業を入れていました。そこで何かを作るのっていいなと思ったのが、お菓子作りの道に行こうかなってなったきっかけでした。そのときからパティシエになれたらいいなあ、となんとなく思っていました。

そのあと新潟県の専門学校を経て長野県内のお菓子屋さんに就職したのですが、体調を崩してパティシエのお仕事を離れることに。その後、療養しながら上田市の企業で4年ほど事務のお仕事をしました。所属していた部署が総務企画事業部という部署だったので、お仕事の中で“何か企画を考えて、提案してそれが通る”ということが何度かあって。私は何もないところから作り出して何かを表現することが好きなんだなというのがそこで分かったんです。会社員だった期間もそういった気づきがあって、何がしたいのかの根本はそこで見つけられた気がします。

でも、働いているうちに“とりあえず毎日過ごせばいいや”という気持ちになっていって、自分が本当は何をやりたいのかを考えなくなっていきました。そのうち精神的に落ち込んでいって、自分の気持ちの波に飲み込まれて突然仕事に行けなくなってしまい、お仕事をしばらくお休みしたんです。

一度立ち止まって見つけた“私のしたいこと”

その間に、自分の人生を見つめ直しました。
当時は今自分が何をやりたいのかわからないし、どこに向かえばいいかもわからなくて。やりたいことを仕事にしたら一番いいんじゃないかと思うんですけど、それがなくなってしまったら自分はどうなっちゃうんだろうとか、そんな心配もあって、パティシエに戻るかどうかってところもすごく悩んでいました。

でも私はお菓子屋さんとかケーキ屋さんをやりたかったわけではなくて、“好きなものを作ってみたい”とか、“お客さんと接客して喋りたい”っていうのがあったのを思い出して。それが両方実現できるのはカフェだなって気づいて、カフェをやりたいというところにたどりつきました。

そのタイミングで父の知り合いの方から、使っていないキッチンカーがあるらしいんだけどキッチンカーやる?とお声がけいただいて、家族の後押しもあって挑戦することにしました。商品開発から始めて、お声がけいただいてから3ヶ月弱でキッチンカーの営業を開始しました。

その後、家族や周囲の人のサポートもあり、コンテナカフェという形で+solをオープンすることができました。

どんなときも変わらずに寄り添う、太陽みたいな存在に

カフェってとてもありふれているカテゴリなので、他のカフェに負けない何かを作らなきゃいけないって思って、一番は健康面を考えて作っています。毎日来て毎日食べても大丈夫なメニューを作りたいと思って、素材や製法にこだわってきました。

たとえば、農薬を使っていないという国内の農家さんから買ったレモンとお砂糖だけで作っているレモネードや、「片手で気軽に食べられるものがほしい」というお客さんの声から生まれた米粉のワッフルなど。見た目だけにフォーカスせず、添加物をなるべく使わずシンプルな材料でアレルギーにも配慮したメニューを開発することで、幅広い世代の方に楽しんでいただけるお店を目指しています。

会社員のとき、自分が何のためにいるのかとか、こういう自分になりたいと思い描いて、それに向かってじゃあ今何ができるかなとか、思い悩む時期が長かったんですけど、そういったときに身近に“変わらない場所”がずっとあると安心するなあって思って。家の自分の部屋みたいな。そういう場所になりたいなと思っています。元気ないときも悲しいときも、嬉しいときも、どんなときも店名のsol(太陽)みたいな存在でいられるお店作りとか商品作りはしていきたいなっていう。そこは大切にしています。

お客さんの声に背中を押されて

会社員時代にiPadとペンシルを買ってイラストを描くようになって、楽しくって自由にいろいろなものをなんでも描いていました。その当時は、誰かに何かをあげるわけじゃないけど、スマホのアイコンや壁紙を自分で描いてみようかなっていうレベルで描いていたところから始まりましたね。

本格的に描き始めたのは自分のお店のロゴからでした。ロゴを考えるときは鉛筆を使って手書きで描いていたんですけど、何か変化させられるものがあればと思って、iPadを使って描いてみたんです。

そこから、インスタに載せるためのキャラクターを作ってみようとか、ラベルシールのイラストを描こうとか、“やってみよう”という感じで描き始めました。

そのうち、常連さんがドリンクのラベルシールを剥がしてスマホに貼ってくださるようになったんです。だから、もしかしたら需要があるのかもと思い、カフェの1周年をきっかけにオリジナルのイラストでステッカーを作って販売を始めました。そのときにお客さんからご好評をいただいたので、わんちゃんのステッカーも作りました。

お店をやっていく中でロゴやイラストについて「素敵ですね、誰が描いているんですか」とお声がけくださる方が増えて、そんな風に思ってくれている人がいるんだって初めて気付いたので、そのときはとてもびっくりしました。私がちょっとやってみようかな、とお出ししたものに対してお客さんが評価くださったのがきっかけで始まったことなので、とてもありがたいです。

イラストレーターとしての第一歩を

実はこれまで、イラストレーターとしては活動していませんでした。

ラベルのイラストやインスタグラムのイラストをかわいいと言ってくださるお客さまもいましたし、友達に頼まれて個人的にイラストを描くことはあったのですが、お仕事にするというところには迷っている部分があったんです。カフェをオープンしてまだ2年経っていないところで、いろいろなことに手をつけていると、「本業が疎かになるんじゃないか」と思い、そういった活動は公表していなかったんです。やるからにはどちらも全力で取り組みたいと思い、きっかけを探していました。

そんな中で、tone villageさんにお声がけいただいたことが後押しになって、これからイラストレーターとしての発信をしていく決心がつきました。一般的にはイラストを依頼するとなるとイラストレーターさんやデザイナーさんの中から選ぶと思いますが、その中でイラストレーターという肩書きのない私を選んでくださったことがすごく嬉しくて。

私の作品が誰かにとっての宝物になったら

イラストレーターとしての活動が本格的に始まるのはこれからのことですが、今まで自分が描いたイラストも全部宝物だと思っているので、屋号は“Tresor”に。フランス語で「宝物」という意味があります。だからこれからも、私が描いてお渡しする作品がご依頼いただいた方にとっての宝物になったらいいなという思いがあります。

それから、私の描くイラストには、ちょっとくすっと笑ってもらいたいという思いもあって。今までお店やインスタグラムでお出ししてきたイラストも、ちょっとの遊び心を意識して描いているんです。宝物でありつつ、見ていたらちょっと元気が出るというか、くすっと笑えるような作品を作っていくというのを大切にしています。

今後は、アイコン作成などのさまざまなご依頼をお受けできればいいなと思っていますが、中でも挑戦したいのは、“何か新しいことを始めたい方”に向けたロゴ制作です。お店の顔になるものって、お客さんがそれを見て来るじゃないですか。一番に目に入るものを手掛けるっていうのはプレッシャーがあると思うんですけど、それが自分にもいいエネルギーになって、作品づくりにも力を込められると思うとやってみたいなって。

それから、イラストレーターとしての活動を通して、もっとイラストの可能性を広げたいと思っていて。女の子やわんちゃんに限らず、いろいろな形が作れるというのを、自分で発信していきたいなと。自分の可能性を広げるために、これからいろんなキャラクターを描きたいと思っています。

ワクワクする方に。自分の気持ちが動く方に。

生きていく中で大切にしていることは、自分の心が動く方に行動すること。

大切にしているというか、そっちに行きたい、そういう自分でありたいなと思うし、自分の心に従っていると毎日楽しく過ごせることがほとんどかなと思うんです。もちろんやらなくちゃいけないこと、苦しいとか大変で嫌だなって思うことも正直あるんですけど。

それを乗り越えたあとに、お客さんからの嬉しいお声をいただいたり、こういったコラボのご依頼をいただいたり・・・自分にとっていいことが返ってくるっていうのを身に染みて感じてきたので、もちろん心が疲弊して動けなくなるほど辛かったらやめた方がいいと思うんですけど、それでも心が躍ることはやり続けたいと思っています。その方が人生が明るい気がするんです。

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