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飯森みどりさん

PEOPLE|2023.9.1

山岳マルシェ
飯森みどりさん

長野県小諸市に移住した後、民家を改装して「山岳マルシェ」というお店を始めた飯森さん。「山岳マルシェ」では、山雑貨や地元食材を使った食べ物の販売、コテージの運営、そして今回ワークショップで開催いただく金継ぎ教室の開催など、さまざまな取り組みをされています。

群馬県から長野へ移住し、開業しようと決めた飯森さんの心境や金継ぎの魅力をお聞きしました。

忙しい毎日の中でつのる“田舎暮らし”への憧れ

私は群馬県出身で、群馬県にある企業で会社員をしていました。仕事がとても忙しく休みも少なかったため、20代後半になると「田舎で暮らしたい」という思いが目覚め始めてきました。当時「自給自足(現TURNS)」という雑誌が大好きで読んでいて、そこには田舎暮らしをして独立をする人の話がよく書かれていたんです。その雑誌に影響されて、自分も「田舎暮らしをしながら独立してみたい」という気持ちがだんだんと大きくなっていきました。

長野の山に魅了されて、移住

長野県に興味を持ったのは、長野の山がきっかけです。
子どもの頃に通っていた保育園が自然保育をするところで、山に登ることが多かったんです。そこがベースになっていて、その頃からずっと山が好きでした。大学生のときに長野の山小屋でアルバイトをしていたことがありました。そのときに長野の山がすごくいいなと思っていて、大学卒業から10年後には長野に移住をしました。

長野に来てからは、リゾートバイトをしながら長野県内のさまざまな場所を転々としていました。小諸を訪れたときに、距離的にちょうどよくて、浅間山が一望できる今の場所がたまたま見つかり、山の雑貨販売をメインとした「山岳マルシェ」を開業しようと決意しました。

初めての開業は、自分に何ができるだろうか?今の時代には何が求められているだろうか?と手探りながらも色々と思考をめぐらせて進めていました。

開業当初は、お店の経営をしながらアルバイトもしていました。
午前中はゴルフ場のアルバイトをして、午後はお店を開けたり、反対に昼間はお店を開けて夜に旅館のアルバイトをしたり。冬はスキー場のアルバイトもしていましたね。

開業から2年後には宿泊業も始めました。数年後、夫と結婚したことをきっかけにアルバイトをやめて、「山岳マルシェ」と宿泊施設を並行しながらやっていくことにしました。

お気に入りの器を直したくて

金継ぎを初めて体験したのは、小諸に移住してきた頃のこと。金継ぎという文化は雑誌を見て知っていたので、東日本大震災の時に割れてしまったお気に入りの器を直したいな、と思っていて。小諸に移住したとき、たまたま金継ぎの教室を見つけて通い始めました。

最初は趣味で通っていた金継ぎ教室でしたが、通っているうちに先生から「上達してきたね」と言われるようになります。その頃はまだ、教えることは考えていませんでしたが、修理の請負は考えていました。

最初は友達の割れた器を直したり、金継ぎした器を善光寺の「びんずる市」に出店したりしていました。「びんずる市」に出店していた時に善光寺の近くにある雑貨屋さんのオーナーから「うちの店で金継ぎをやりたい人がいるんだけど、教室をやってくれませんか?」と声をかけていただいたことがきっかけで教室を始めることに。

その後も生徒さんの紹介で、軽井沢をはじめさまざまな場所で教室を頼まれるようになって。人つながりで金継ぎの教室が広がっていきました。それから2~3年後、「山岳マルシェ」で金継ぎ教室を本格的に開催するようになりました。

10年前に比べると金継ぎは、テレビで特集されることもあって有名になってきています。興味を持ってくれる人が増え、金継ぎの仕事も増えてきました。

「ものを大切にする」日本人の文化

金継ぎは、欠けたり、割れたり、ヒビが入ったりした器をくっつけて、溝を埋めた後に表面を削りなめらかにし、漆を塗ってから金や銀などの金属粉を蒔いて仕上げます。

壊れたものを直せるということが、日本人の文化だなと思っていて。
日本人は、「修理する」とか「ものを長く使う」とか、英語でも「MOTTAINAI」という言葉が使われるくらい日本独自の「ものを大切にする」精神を持っていると思います。

また、仏教的な考えも含まれていて「わびさび」という言葉がありますが、完全ではない状態に「美」や「満足感」を得るという精神的な部分にも魅力を感じています。

金継ぎの時間の流れが、忘れていたものを思い出させてくれる

私自身も金継ぎを初めて体験したときに、ものすごく静かでゆっくりとした時間が流れることに感動しました。

現代の時間の流れはとても早く、時間がせわしなく過ぎていきます。
そんなめまぐるしい毎日の中で忘れてしまう時間や感情があると思うんですけど、金継ぎの時間の流れが忘れていたものを思い出させてくれるんだなって。「こういう時間必要だったな」ということをゆっくりと流れる時間の中で感じていました。
生徒さんからも、「集中できるし、静かにもくもくとやる時間が好きでいつも楽しんでいます。」と言っていただけるので、皆さんの役に立っていて良かったなと思います。

生活の中の余白が、やる気につながる

今は「山岳マルシェ」と「宿泊業」、「プルーンの販売」の3つの事業をしています。
宿泊業については旅館でアルバイトをしていたときに、外国の人がお客さんに多かったことがきっかけで始めました。外国の人と英語で話すの楽しいな、と思ったことが印象に残っていて、やってみたかったんです。

また、宿泊業だと収入が安定するんじゃないかなと思って、手探りながらに始めてみました。もともと人と関わることが好きで、観光地や魅力的な場所を紹介することが好きだったので、自分に合っているなと感じています。
プルーンの生産は、夫の実家の家業です。販売の方を何か手伝えるかな?ということで、山岳マルシェが窓口になって販売できればいいなと思って始めました。

今色々なことができているのは、生活の中の余白があるからだと思います。
忙しすぎると他のことに対するやる気が出てきにくいと思うので、余裕というのがある程度必要。生活の中の余裕や余白があって、初めて「あっ!次はこんなことやってみたい」というのが思い浮かぶと思います。それだけではなくて、色んな人に会って刺激をもらうと「私もそれやってみたいな!」と考えが発展していくのかもしれないですね。

金継ぎを初めて体験される方へ

最初は難しいと思う方もいると思いますが、難しいことはなく基本的には単純作業です。細かいところはありますが、器用な方、不器用な方関係なく「直したい」という気持ちが大切です。モチベーションがあればできると思いますし、来てくださる人の中には難しいものをお持ちになる方もいらっしゃいます。

器だけではなくて、置物やアクセサリーなど、さまざまなものを「これはできますかね?」と持ってきてくださるんです。どんなものも「できるだけ直したい」という思いがあるので、金継ぎでできないとしても何か違う方法でもできないか一緒に考えていきたいなと思っています。

皆さんにとって心地よい時間になればいいなと思って教室を開いています。1ヶ月に1回のこの日を楽しみにしてます!と言ってくださる声を聞くと、この時間や場所をこれからも提供し続けたいなと思います。

▼金継ぎ教室の詳細はこちらから

【10月】金継ぎ教室

(記事:tone villageメディア編集部 あん)

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