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LIFE|2023.11.20
ページを繰ることで触れられる、こことは別の世界や思考や新たな知識。
一冊ごとに広がる物語やメッセージはさまざまで、そこに飛び込むたびに、ワクワクしたりハラハラしたり、ジーンとしたり考えさせられたり。
本を開くときの楽しみは何にも替えがたく、日々を豊かにしてくれます。
このシリーズでは、そんな本に魅せられた読書好きなスタッフが、お薦めしたい一冊を紹介していきます。
第1回は、アプリコットデザインの事務方担当の村石です。
育児に追われてペースはぐんと減ってしまったものの、図書館通いが習慣で常に傍らには積読本。
物語が好きで、読む本はほとんどが小説。ジャンルは問わずに気になった本はなんでも手に取ります。そんな私の、物語好きの契機になった一冊を紹介します。
小学生のとき、学校の図書館で借りた本の管理と記録をする「読書カード」というものがあって、それを溜めていくのが楽しみでした。
本を借りるとカードに書けるのが嬉しくて、友人とカードを見比べるのも楽しくて、競うようにたくさんの本を借りていました。
図書館に通って本を手に取る機会が増え、本が身近な存在になるきっかけだったかもしれません。
絵本やまんがや物語。
お菓子や占いや動物の本。
いまでも印象に残っている「わかったさん」や「クレヨン王国」・・・懐かしい。
学年が上がるにつれて、読む本は絵が少なくなりページは増えて、文字は小さくなっていきました。
そんな中で、あるとき目に留まったのが「裏庭」でした。
シンプルで秘密めいたタイトルと、うっそうとした植物の先にある明るい風景。
冒険を予感させる表紙に惹かれて手に取った「裏庭」。
手にすると、装丁も文字も挿絵も、児童書向けにされたものではない、本格ファンタジー。
読了までに時間がかかったものの、物語に引き込まれる楽しさや読後の達成感・充実感が格別で、「物語は楽しい、これからも本を読もう」と決定づけた大切な一冊になりました。
かつて英国人の別荘だった荒れた洋館の庭は、近所の子供たちの格好の遊び場。
鮮やかな草花や虫たちが迎えてくれる豊かな庭とは別の、隠された「裏庭」。
そこは限られた者だけが入ることのできる秘密の存在。
孤独と傷を抱えた中学生の照美は、ある出来事をきっかけにその異世界への扉を開く。
冒険の中で自身の心の傷と向き合い、自身を肯定していく物語。
すごく面白かったということと同じくらい、ダークで大人っぽいという冷たい印象も残っていた「裏庭」。
子どもの頃は、テルミィの冒険として楽しんでいた物語は、読み返してみると、こんどは自身の物語としても迫ってきます。
崩壊へ向かう世紀末の世界観や、恐ろしくて辛い出来事から来たのだと思っていた物語に感じた「冷たさ」の本当の正体は、当時は経験がなくて気づけずに素通りしていた、会話や展開の奥に潜む、意図やメッセージでした。
傷や孤独も含めていろいろと経験して大人になった今だからこそ、気づくことができたように思います。
子どもの頃にかけられたらどんなにか勇気をもらえたはずの、まっすぐに心に届く言葉もたくさん。
当時きちんと受け止められたのか忘れてしまったけど、この本が心に残っているということは、心のどこかに痕を付けてくれていたのかもしれません。
なんとなく孤独を感じた時や励ましてほしいとき、現実から離れた世界に浸りたいときに、受け止めて背中を押してくれるような一冊です。
読むときの気持ちや経験によって、見え方が変わったり新たな発見のある物語。
私もまた時間をおいて読み直したいと思います。
裏庭/梨木香歩(著)理論社
(こちらは文庫版の表紙です)
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