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やめたことは、無駄になっていなかった

こんにちは、中村です。

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今日は、僕の昔の話を少しだけ書いてみます。あまりかっこいい話ではありません。うまくいかなくて、途中でやめた話なので。

僕は、独立を三回しています。そのうち二回は、続けられなくてやめました。

一回目は、二十三歳のとき

犬のセレクトショップを開きました。テレビでペットの市場がこれから伸びる、というのを見たからです。それだけです。いま思うと、無謀というか、何も考えていなかったなと思います。

それでも準備はしました。商品を仕入れるあてがなかったので、五十社以上に営業をして回りました。

開店の日、僕はものすごい数のお客さんが来ると思っていたんです。あれだけ準備をしたので。

来たのは、想像していた十分の一にも満たない人数でした。

血の気が引く、という言い方がありますよね。あれは本当にあるんだな、と思いました。初日から、お金の心配が始まりました。

そのあとネットショップを始めて、こちらはわりとうまくいきました。売れるようになっていったんです。それなのに、僕はそこでやめています。売れるほど、抱えるものが増えて、だんだん怖くなってしまったからです。

二回目は、二十九歳のとき

ホームページを作る仕事を、家で始めました。前にお店をやっていたので、お店を運営する人の大変さが分かる。あのころの自分みたいな人を手伝いたい、と思ったんです。

ただ、知り合いもつながりもありませんでした。とりあえず案内を送って、待っていました。待っていれば、どこかから連絡が来るだろうと思っていたんです。

来ませんでした。待てど暮らせど、一件も。

三か月で、辞めました。そのときに心に決めたんです。二度と独立なんてしない、と。

落ち込んで言ったというより、けっこう本気の結論でした。二回やって、二回ともうまくいっていないので。ああ、自分はこっち側の人間じゃないんだな、と思ったんですよね。

それなのに、羨ましくなってしまった

それでまた、就職しました。美容関係の会社です。

そこで、独立していく美容師さんたちを見ることになりました。今まで一緒に働いていた人が、看板を掲げて、自分の名前でお店を始めていく。そういう姿を、そばで何度も見たんです。

それを見て、僕はどう思ったか。

羨ましかったんです。

自分でも意外でした。二度と独立しないと決めていたので、もう自分には関係のない世界だと思っていたはずなのに、人が夢を叶えようとしている姿を見ると、いいなあ、と思ってしまう。

その気持ちが、消えなかったんですよね。

決めたことより、勝手に出てくる気持ちのほう

決意って、けっこう簡単にできるんです。二度としない、と決めるのは一瞬です。しかも、決めた直後がいちばん強い。

でも、羨ましいと思ってしまう気持ちのほうは、自分では止められません。

決意は、頭で作るものなんですよね。うまくいかなかった理由を並べて、こういう結論にしよう、と自分で決める。だから、あとから変えることもできる。

でも、羨ましいというのは、決めた覚えがないのに勝手に出てくる。人のお店の看板を見て、いいなあ、と思ってしまう。これは考えて出したものじゃないんです。

だから僕は、自分が本当に何をやりたいのかを知りたいときは、決意のほうじゃなくて、こっちを見るようにしています。何に対して羨ましいと思うか。何を見たときに、ちょっと胸がざわっとするか。そっちのほうが、たぶん正直です。

それで三十二歳のとき、僕はもう一度独立しました。二度としないと誓ったはずなのに。

やめたことは、無駄になっていなかった

今日お伝えしたかったことが、二つあります。

一つは、やめた経験は、そのまま無駄になるわけではない、ということです。

一回目で、お金が回らなくなる怖さを知りました。二回目で、待っていても仕事は来ない、と知りました。この二つを知らないまま三回目を始めていたら、たぶん同じところでつまずいていたと思います。

当時は、ただの失敗でした。でも、いまから見ると準備でした。

そのときには、絶対に分からないんですよね。僕も分かりませんでした。これが何かの役に立つ日が来るなんて、まったく思っていませんでした。分かるのは、だいぶあとになってからです。

もう一つは、二度としないと決めても、羨ましいと思う気持ちは残る、ということです。

もし今、何かをやめたばかりで、もうこりごりだと思っている方がいたら。その決意は、たぶん本物です。無理に前を向かなくていいと思います。

ただ、しばらく経ったときに、誰かの姿を見て、いいなあ、と思ってしまうことがあるかもしれません。

そのときの気持ちのほうを、僕は信じていいと思っています。

僕自身が、そうだったので。

今日より明日が、ちょっと楽しくなりますように。